2022年2月12日土曜日

Garmin Approach S62 とGarmin Foreathlete 910XTJのGPS精度比較

GPS精度の良いGPSウォッチを探してみたところ、みちびきのL1S信号に対応しているGarmin Approach S62(以下S62)が良さそうなので手に入れました。ほとんどのGPSウォッチはみちびきに対応していてもL1C/A信号という通常のGPSとほとんど変わらない精度の信号しか受信していないのですが、S62はL1S信号によって電離層遅延による誤差を補強できるのでサブメーター級の精度が実現できるのだそうです。S62はゴルフ用ですが、ランニングも計測可能です。ゴルフ用のGPSウォッチがL1S信号に対応していて、ランニング用が対応していないのは、ゴルフではレーザー距離計という精度が非常に良い競合が居るからでしょう。

S62を手に入れてから10コースを比較のために走ってみました。結果を最初に言うと、GPSの精度はS62よりもGarmin Foreathlete 910(以下910)の方が良さそうです。計測距離はS62よりも910の方が正しそうですし、走った所をより正確にトレースできていそうです。

10コースの走行結果を表にまとめると以下の通りです。計測時は910とS62は両方とも左腕につけて走りました。左腕右腕の差による距離の差はありません。停まっているときに同じスタート・ゴールの場所で計測開始・終了を押しています。また、レコーディングレートは毎秒です。ほぼ同等の計測条件です。

この表からわかる傾向は、まず910の計測距離の方がS62よりもほとんどのケースで長くなっています(往復5kmだけはS62の方が長いので、これだけは例外です)。ほぼ直線のコースだと1kmあたりの差は-4~2 mで、周回コースになると1.7~14 m、折り返しや曲がりが多いお絵描きコースだと3~18 mズレてしまうようです。

Mapでの計測距離と比較すると、S62の方がMap距離に近かったり、910の方が近かったり、ほぼ引き分けと言った感じです。実際のランニングでは人や車や凸凹などを避けてまっすぐ走っていなかったり、折り返しやカーブでは膨んだりしているので、Mapでの計測距離よりも若干長く走っているはずです。これを考慮するとほぼ直線や周回コースでも実際に走った距離は910の方が近いのではないかと思います。

910とS62GPSの軌跡を地図に重ねて比べてみると、910の方がGPSの軌跡の重なり具合が良いようですし、実際に走ったようにトレースできているようです。例えば以下の3種類の周回コースの軌跡の結果では、左の3つがS62の軌跡で、右の3つが910の軌跡ですが、910の方が軌跡の重なりぐらいが良いですし、真ん中のコースではS62のスタート地点が15mぐらいズレています。

この結果ではS62には期待ほどの精度は無さそうです。常に動いているランニング中はL1S信号を使っておらず、ゴルフ中にグリーンとの距離計測をしているときなど静止しているときでないとL1S信号を使っていないのでしょうか。S62は935よりもGPS精度は良くなっているようですが、910には敵わないようです。910は10年近く前に発売された物ですが、GPS精度に関しては非常に完成度が高かったようです。その後はデザインをスタイリッシュにしたり、光学式心拍計などを組み込んだりして、GPS精度が犠牲になっているのではないかと思います。ただ、S62の良い所としては以下の点があります。

  • GPSの電波捕捉が速く、空の見える開けた場所だとだいたい1分以内ぐらいで捕捉完了になる。同じ条件で9102-3分ぐらいかかる。
  • 歩数・ピッチ・歩幅・心拍数などのデータが取れる。
  • 見た目は赤がアクセントとして使われているので、910や935よりもおしゃれ。

この結果は個体差の可能性もあるので、常に910の方がS62よりもGPSの精度は良いということは言えません。この結果が統計的に普遍性があるかは、少なくともそれぞれ30台ぐらいのデータを集めないとハッキリとは言えません。