2020年4月29日水曜日

ランナーは10m離れなければならないのか?

ランナーが集団走する場合、前後に10m離れる必要があると言われていますが、博士号(工学)を持つ者のはしくれとして、専門外ではありますが元の論文を読んで考察してみました(論文へのリンクはこちら)。 
メディアで取り上げられている図です。出典はこちら


長くなりそうなので結論を最初に書くと、この論文の結果をもって金科玉条のごとくランナーは前後10m離れなければならない、と言うのは厳しいです。新規感染者数が減ってきているのでこのまま社会的距離や自粛を保っていくのが良いと思いますが、ランナーは前後10m離れるのが絶対的なルールだと厳しく言うのは言い過ぎです。同じ基準を適用するなら社会的距離は8mになります。歩道や店内や会社内や電車の中で他の人からは8m離れましょうとなります。

以下、論文の問題点を挙げていきます。

(1) 査読をまだ通っていないこと。信頼性がまだ低いです。

(2) 医学関係者が共著者に入っていないこと。あくまで流体力学のシミュレーションであり、感染力を有する量の飛沫が付着するのか否かの議論がないこと。これも信頼性を低くしています。

(3) 飛沫を後ろのランナーが浴びるのがゼロになる距離を、離れなければならない距離としていますが、この基準の妥当性。くしゃみなどをした時の飛沫の距離をハイスピードカメラで実際に観測した論文で、飛沫は8m飛ぶというものがあります。この論文は医学分野の査読論文集に既に掲載されています(論文へのリンクはこちらです)飛沫を浴びるのがゼロになる距離を離れなければならない距離とするなら、社会的距離は8mとなります。医学分野の査読付き論文の方が信頼度が遥かに高いので、こちらの方を優先度の高いルールとすべきです。しかし、おそらく感染力を考慮して現状は1~2mとされています。基準は同じにするべきでしょう。8mを1~2mに減じているので、比例計算なら10mは1.25~2.5mですね。
ハイスピードカメラによるくしゃみで出る飛沫の観測です。出典はこちら

(4) このシミュレーションの図から見て取れることですが、ランナーから出た飛沫は自分自身の顔や胸に多く付着していること。これはこの論文やメディアが触れていないことですが、ランナーは自分が吐いた息に突っ込んでいくので、自分自身に多く飛沫が付き、後ろに流れていく量は減っています。感染力を有する量の飛沫が後ろに流れて付着するのか否かの議論がやはり必要です。
メディアで取り上げられている図です。手前のランナーの顔にも飛沫が多くついています。出典はこちら
論文の図です。サブスリーペースで走っているランナー(前走者)の顔付近の拡大図です。顔と胸に飛沫が多くついています。出典はこちら

(5) 吐く息のスピードを、ウォーキングでもサブスリーペースでのランニングでも同じスピードとしていること(正確には深呼吸したときの吐く息のスピードをシミュレーションでは用いています)。サブスリーペースで走っていて吐く息がウォーキングと同じとは思えません。吐く息のスピードが速くなるなら前方へ飛ぶ飛沫の割合が多くなるので、後ろへ流れる量は減るはずです。自分自身に付着する量と地面に落ちる量が多くなるはずです。ここでも感染力を有する量の飛沫についての議論がやはり必要です。

(6) この論文に載っている図と、メディアに流れている図が違うこと。センセーショナルに見える異なる条件の図をメディア向けに流しているようです。センセーショナルに取り上げられることを狙って、売名行為をしているのでしょうか?著者に対してあまりよろしくない印象を抱いてしまいます。メディアも相変わらずセンセーショナル第一で、サイエンスがないです。
メディアで取り上げられている図です。出典はこちら
論文の図です。出典はこちら。メディアの図と論文の図を見比べると飛沫の分布が大きく違います。どちらもサブスリーペースで走っているものとされています。論文の方が正しいとすると、メディアの方は何らかの条件(風速など)を変えた結果か、より速い速度で走っている場合の図が間違えて掲載されたのでしょうか?

(7) 太陽光に当たると新型コロナウィルスは2分程度で半減するという研究結果をアメリカ政府などが取り上げていること。屋外で走るランニングでは太陽光の効果を考慮する必要があると思われます。付着してから太陽光に晒されても感染力を有するか否かについての議論がやはり必要です。

以上、書き散らかし気味ですが、論文を読んでみての私の考察です。繰り返しますが、新規感染者数が減ってきているのでこのまま社会的距離や自粛を保っていくのが良いと思いますが、ランナーは前後10m離れるのは絶対的なルールだと厳しく言うのは言い過ぎです。同じ基準を適用するなら社会的距離は8mになります。歩道や店内や会社内や電車の中で他の人からは8m離れましょうとなります。

とはいえ、新規感染者数を減らしていかなければ新型コロナ流行の終息は有りません。このまま社会的距離や自粛を保っていくのが良いと思います。私は自作のマスクやフェイスシールドを作って、他人を守りつつ自分も守って走っています。マスクやBuffをして走っている人も徐々に増えてきていると思います。感染が心配な方はマスクやBuff、やりすぎかもしれませんがフェイスシールドをして走りましょう。他人がマスク無しで走っているとか、集団で走っているとかは気にしないようにしましょう。ストレスを自分がため込まないようにしたり、喧嘩をして警察のお世話にならないようにしたり、怪我をして医療関係者のお世話にならないようにした方が良いと思います。 
クリアフォルダーで作ったフェイスシールド。やりすぎ?

(追記)ランニングは息が荒くなるので吐く息に含まれる飛沫量やウィルス量が増えるという見解については、どの程度増えるのか定量的に知りたいところです。この量も含めて感染力を有する量の飛沫が後ろに流れるかを議論して、どの程度離れたら良いのかコンセンサスを形成するのが良いでしょう。
もしもランニング時に吐く息に含まれるウィルス量が顕著に増えるようであれば、むしろこれを利用してPCR検査の精度を上げられると思います。例えば、検体採取前に走ってきてもらうとか。もちろん走れそうな状態の人だけ。肺の奥に潜んでいるウィルスが出てきて、口から出るウィルス量が顕著に増えるなら、途中の喉や鼻腔内のウィルス量も増えているでしょう。
また、別の可能性としては検体採取方法を大幅に変えられます。マスクして踏み台昇降運動をやってもらって、マスクに付いた飛沫を検体とするとか。これだと広い場所を使えば一遍に大勢の人間から検体が採取できます。医者や看護師が綿棒を鼻や口に突っ込んで検体を取る必要がなくなり、いま1人1時間かかる検体採取がボトルネックでなくなります。また、検体採取時に医者や看護師が感染するリスクが激減します。

2020年4月25日土曜日

クリアフォルダーで作るフェイスシールド

クリアフォルダーでフェイスシールドを作ってみました。オリンピックのトーチデザインなどを手掛けたデザイナー:吉岡徳仁さん考案によるものをカスタマイズしました。
https://www.tokujin.com/news/?l=ja


必要なものは、透明なクリアフォルダー、上のページからダウンロードした型紙、ペン、ハサミ・カッターです。メガネのツルに通すところは、サングラス用は大きめに切った方が良いです。サングラスはレンズを外せるものの方が良いです。吐いた息で曇りにくくなりますし、見た目も良くなります。

口のあたりに飛沫飛散防止用に布を貼り付けて走ってみました。マスクやバフのように密着していないので全く息苦しくありません。ただ、布を貼り付けるなら全面をしっかり貼り付けた方が良いです。浮いている部分があると、大きく息を吸い込んだ時などに布が口に張り付くことがあるので。

マスクよりフェイスシールドの方が口や顔を覆う面積が大きいので、飛沫飛散量はマスクよりも減るはずです。吐いた息が何度もシールドと顔に当たるはずなので。また、他の人からの飛沫を顔に浴びることも大幅に減るはずです。自分自身がCOVID-19に感染する可能性が低くなります。

Buffは一部の人しか持っていませんし、いま高騰しています。クリアフォルダーなら誰でも持っていますし、もしも無ければ百均で買えます。クリアフォルダーからお手軽に作れて、Buffやマスクよりも防御力が高いですし、息苦しくないのでお勧めです。

都会や人の多い公園などを走るなら感染予防に努めましょう。この時期に医療関係者のお世話になる人を一人でも少なくしましょう。自分自身も、他人もかからないようにしましょう。

2020年4月19日日曜日

2020年4月6日月曜日

ナイキ ズームフライフライニットとズームフライ3の耐久性比較

フルマラソンを11回走ったズームフライ3 と、10回走ったズームフライフライニットの靴裏の摩耗具合の比較画像です。これらの靴は普段の練習などで使わず、フルマラソンを走るときにだけ使っていました。フルマラソンの時の行き帰りの道をこれらの靴で歩いていますが、基本的にフルマラソンをそれだけ走った時の摩耗具合になります。

フライニットの方は黒い素材の溝が消えかけたり、白い素材の削れや痛みが見られます。他に、フライニットに特徴的な歩いているときにカクンとなる感じが感じられなくなっています。階段を降りるときに端に上手く足がかかって、カクンと降りられるときの感じです。雨の時に滑りやすい舗装の所で滑る感覚が出てきたので、10回で大会用を退役させて練習用になりました。

3の方は黒い素材がちょっと摩耗してきていますが、まだまだ大丈夫そうで、白い素材の方も大丈夫そうです。3は耐久性を改善したと言う話ですが、確かにその通りのようです。まだまだ大会用として使えそうです。

フルマラソンを10回走ったズームフライフライニットの裏
 

フルマラソンを11回走ったズームフライ3の裏